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池上彰と考える、仏教って何ですか?

2013/02/05
『池上彰と考える、仏教って何ですか?』池上彰 飛鳥新社(1300円+税)2012年8月刊

 NHK時代、「週刊こどもニュース」でチベット問題を実に明快に解説したことのある池上彰氏による、仏教の可能性を探る書。まずインドから今に至るまでの仏教の歴史が概観され、今の日本人が考えているものが必ずしも仏教の全体像ではないこと、仏教とは何かを理解するために、インドから直接教えが伝わったチベットの仏教が手がかりになることが示される。葬式仏教は本来の教えから外れているとか、妻帯する日本の僧侶は堕落している、といったよくある一方的な断罪をせず、歴史を辿っていくことで、読者自身に今のあり方が本来のものではないことに気づかせていく手法がすばらしい。

 後半は、インド・ダラムサラに飛び、ダライ・ラマ法王お膝元のナムギェル寺僧院長による仏教の概説と、法王のインタビューが、氏の解説を交えて紹介されている。現僧院長は何度か日本を訪れ教えを説かれているタムトゥク・リンポチェ(チベット文化研究会報バックナンバーに教えやインタビュー記事。吉村均「仏教における神秘主義」『比較宗教への途3 人間の文化と神秘主義』北樹出版にも一部引用)で、日本人はいつも急いでいて、仏教をじっくり学ぶ時間も実践する時間もない、と語られている。これはインドでお目にかかるたびに言われることで、個人的にはとても耳が痛い。外見的な環境を整えても、心の平和を得ることはできず、慈悲の心を育むことによって、自分の心の状態を向上させることができ、たとえ社会全体が苦しい状況でも、心の平和が維持できれば、心に満足感を得ることができる。短い時間で急激な変化は期待できず、日々少しずつ積み重ねることが大切だ、というのが師の教えである。

 ダライ・ラマ法王に対しては、震災や原発、日本の経済状況や、将来の社会での仏教の役割、チベットの抗議の焼身、チベット問題への見通しなど、現代の様々な問題が尋ねられている。

 本書の最後に、「仏教を知ることは、己を知ることです。そして、日本を知ることです。自分のことをよく知り、自分にとって何が大切なのかを知ってこそ、他人や他国の人々が大切にしているものを理解することができるのではないでしょうか」とあるが、これは国際社会に精通した氏の実感だろう。周囲の真の仏教や心の平和を求める人にぜひ薦めてほしい一冊である。

池上彰と考える、仏教って何ですか?池上彰と考える、仏教って何ですか?
(2012/07/19)
池上彰

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